プラントベース&グルテンフリーのスイーツ「UPBEET!Tokyo(アップビート・トーキョー)」と、南九州産の紅はるかを主原料にした「BENI BITES(ベニバイツ)」の2ブランドで海外進出に挑戦する神宮司希望さんにインタビューしました。

UPBEET!Tokyo

客室乗務員(CA)、朝食料理専門店の経営という経歴を経て、2018年に「UPBEET!Tokyo」を立ち上げ、さらに今年7月にさつまいもの新ブランド「BENI BITES」をリリースする神宮司さん。 お話ししているだけでハッピーオーラが伝わってくるパワフルな彼女とnijiとの出会いは、2月にNYで開催したniji主催のポップアップショップでした。ブランドの海外進出に向けた市場調査の一環で、会場に試食ブースを構えて現地のリアルな声を収集。約200人に試食を実施した結果、神宮司さんが得たこととは…。 今回は日本を飛び出して、海外でブランド展開することになった神宮司さんに、そのきっかけや市場調査の重要性、今後の展望などを伺います。

Q/まずは「UPBEET!Tokyo」「BENI BITES」の2つのブランドについて教えてください

2018年にスタートした「UPBEET!Tokyo」は、卵や乳製品を使用しない100%植物性の原料で作るスイーツブランドです。ドーナツや甘酒ブラウニー、チーズケーキをメインに、ビスケットやグラノーラなども販売しています。ドーナツには3年熟成したみりんを使っていたり、チーズケーキには木桶で作った白味噌を使うなど、日本ならではの材料を使用しています。

もう一つは、6月にリリースしたばかりの鹿児島のお芋を使ったブランド「BENI BITES」です。出身地である南九州産の「紅はるか」を使った商品で勝負してみたいという思いから、2年前にプロジェクトを始動。鹿児島で何十年も焼き芋や干し芋を作り続けているおばあちゃんに協力していただき、商品を完成させました。

UPBEET!Tokyo

Q/「UPBEET!Tokyo」のビジョンや創業した理由は?

プラントベースやヴィーガンを日本の日常にして、食の選択肢を増やしたいという思いが創業の発端です。

例えばアメリカでは、特にヴィーガンの人ではなくても、食べ過ぎた翌日やダイエット中に、レストランやカフェで当たり前のようにヴィーガンメニューを選べます。

しかし、日本はわざわざ探さないと見つけることができません。

これは、日本人特有の「これが当たり前」という文化や、「ヴィーガンメニューを選ぶだなんて意識高いね…」といった偏見や同調圧力のような考え方が、食文化に根強く残っているからだと感じています。

しかし、欧米に出てみると自由なんです。みんなにそれぞれの選択肢があるし、何を選んでも良くも悪くもない。もっと日本人も自由な発想が持てたら素敵だと思うんです。

Q/選択の幅が広がり、他人の選択に対して関与しない自由な生き方ができたら素敵ですよね。創業にあたり、メニュー開発はどのようにされたのですか?

以前から個人的な趣味でプラントベースのスイーツを作ることはあったのですが、本格的に商品作りを進めるために、各国のプラントベースのお菓子を研究しようと世界放浪の旅へ出掛けました。

イギリスでは、プラントベースのスイーツ作りを学ぶ専門学校に通ったのですが、そこで先生が「TAMARI」と呼ばれるたまり醤油を、チョコレートケーキに入れる姿に衝撃を受けました。

イギリスでは、味に深みを出すトレンドの材料としてたまり醤油が崇められていたんです。

 

この経験が切っ掛けとなり、帰国後は「日本の伝統的な食材で、スイーツに使えるものは何?」と、興味がわき、甘酒、酒粕、味噌…と、色々と探求しました。

 

プラントベースとかヴィーガンって「海外から来たもの」というイメージがあると思うのですが、調べていくと、日本に古くからある「精進料理」「発酵食品」などは、まさにプラントベースの基礎となるものがたくさん。この領域で日本から世界に向けて発信するブランドも、あっていいのではと思い、いろんな要素を組み立て、現在に至ります。

Q/斬新ですね! 具体的にはどんな食材を使うことになったのでしょうか?

日本各地の生産者さんを実際に尋ねて歩き、出会った素晴らしい食材を作る方々にご協力いただいています。

例えば、看板商品のドーナツには杉浦味淋さん(愛知)の純米本みりんが欠かせません。3年かけて熟成したみりんは古酒のような茶色で保湿効果があり、ドーナツの生地をしっとり、ふっくらと仕上げてくれます。

また、高村商店さん(長野)の、出来立ての麹を使った濃厚な甘酒は「ブラウニー」のメイン食材の一つです。優しくて奥深い甘酒はブラウニー作りに欠かせない材料です。

また、長野で愛情たっぷりに育てられた吉池農園のリンゴは、ドーナツやブラウニーに使用しています。プラントベーススイーツは卵が使用できないため、卵の粘り気をりんごで代用しているんですよ。

UPBEET!Tokyo

Q/海外展開をすることになったきっかけは?

ちょうどコロナが落ち着いた2023年3月のことです。

アメリカで世界最大級のナチュラル・オーガニック食品見本市「Natural Products Expo West 2023」が開催されることを知りました。近年コロナの影響で海外へ行くチャンスがなかったため、「アメリカの最新の食のトレンドの現状を知っておきたい!」と思い渡米したのですが、そこで日本の出展者の少なさに衝撃を受けました。

「日本には良いものがたくさんあるのに勿体無い。日本はもっと頑張らないといけない」と強く思いました。

また、「プロバイオティクス」「腸活」に対する注目度が世界的に高まっていました。

「まさにうちの商品。これはいけるのでは…」と感じ、海外進出を決めました。

その後、色々な人に話を聞きに行ったり、GFP (農林水産物・食品輸出プロジェクト)に登録したりと、実際に動き、海外展開する準備をスタート。約1年かけてブランドと商品を固めていきました。

Q/すごい行動力とスピード感です。2024年2月のNY滞在ではどのような試みを行ったのですか?

NYでは、健康意識がとても高い方と、全く関心がない人がいて、その二極化を強く感じました。例えば、本当に意識の高い方は、白砂糖ではなくても、砂糖自体をなるべく摂取したくない…。健康意識の高まり方が加速していることを体感できました。

 

新ブランドに関しては、さつまいも自体は「スイートポテト=ヘルシー」という印象もある様子で、スッと認知してもらえました。ただ、「干し芋」に関しては、まだ全く周知されていない状態なので、「どんな風に味や特徴を伝えると良いか」を、一から考えていかないといけません。早速、帰国後にアメリカのデザイナーを探し、相談し、一から紐解く作業を経て、現在に至ります。

UPBEET!Tokyo

Q/販売する際に「日本のブランドであることを全面に出してアピール」するなどの戦略はお持ちですか?

抹茶やお酒のように、日本ブランドをあえて全面に押し出す必要はないと思っています。

日本産ということは、数ある特徴の一つとして、興味を持った人には「日本の伝統的な保存食で干し芋と呼ばれているんだよ」程度で伝われば良いのかなと考えています。そもそも日本=ヘルシーというイメージもありますから。

日本のものだからだけではなく、「こんなユニークでヘルシーなスーパースナックがあるんだ!」と新しい発見をしていただき、現地の方の日常に欠かせない存在になるのが目標です。

Q/普通にスーパーマーケットのプラントベーススイーツやエナジーバーコーナーにずらっと並ぶイメージですね。楽しみです。今後の展望を教えてください。

これまでは、海外の文化や良いものを取り入れて商品作りなどをしてきましたが、私たちの住む日本には実は素晴らしい食文化や食材が山ほどあると思います。その一つが「さつまいも」。

日本のさつまいもは本当に甘くて美味しいと思うのです。そして昔から私たちの健康や食生活を支えてきてくれている存在ですよね。この日本が誇るスーパースナックのさつまいもを世界に発信したいと考えています。

いつかニューヨークの街のど真ん中に、焼き芋のトラックを走らせたいです。昔ながらの「石焼〜いも」のようなノスタルジックさは残しながら、凄くかわいくてカラフルなものを用意して、いい匂いを漂わせながら走ったら、ニューヨーカーがどんな反応をするでしょう…。ぜひ見てみたいです。

 

BENI BITES」の商品は、日本ではさつまいもの日にあたる10月13日に販売をスタート。アメリカでは10月にイベントでお披露目し、その後、営業しながら販路を開拓していきたいと思っています。生産者さんのこだわりとをしっかりと生かした体と心が満たされる商品に仕上がっていますので、ぜひ食べてみてくださいね。

 

Q/とってもパワフルですよね。活力の源とアメリカを選んだ理由が知りたいです。

活力は食べることでチャージしています。本当にただの食いしん坊なんですよ(笑)。

小さい頃から食べることが大好きで、今も「美味しいものを、みんなにも食べてもらいたい。食べるものから得る活力を皆さんにお届けしたい」という、一心で頑張っています。

進出した国をアメリカにした理由はシンプルにアメリカの「違い」を開くと思わず〜大好きだからです。

CAの頃から担当することが多かったのですが、「違い」を悪と思わず、受け入れながら共存する文化、自由な風潮、ウェルカムでオープンな雰囲気が大好きです。

Q/最後に海外への憧れを抱く日本人にメッセージをお願いします

私たちは日本人でもありますが、地球人でもあります。日本の中だけで人生を終わらせてしまうのは勿体無いことです。私はCAという職業に就いたことをきっかけに世界がグッと身近になりました。皆様もふとしたきっかけで、世界が身近になる瞬間がきっとあるはず。

でもそれは自分から一歩踏み出さなければその瞬間はやってきません。

 

世界を旅するとどこに行っても「日本っていい国だよね!」「日本人て最高だよね!』と言ってもらえることは日本、そして日本人であることの素晴らしさも再認識させてくれます。国内という小さな枠に囚われず、世界に目を向けてみることで、見える景色が変わり、人生に新たな彩りが加わるはず。私自身も、まだまだスタートラインに立ったばかりです。一緒に世界へのチャレンジを楽しみましょう!

最後に

神宮寺さんには、日本からnijiのイベントにご出店いただき、心より感謝申し上げます。
ニューヨークのお客様に実際に試食していただき、貴重な反応を得られる機会を提供できたことを大変うれしく思います。
今後もニューヨークのマーケットに合わせて試行錯誤を重ねながら、アメリカでの市場拡大に共に挑戦していければ幸いです。

 

日本で活動されているハンドメイド作家の皆さまへ。
「海外で販売してみたいけれど、どこから始めればいいかわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。ポップアップイベントへの出店だけでなく、オンラインストアでの販売も可能です。

ニューヨークでご自身の商品を販売してみたい方は、ぜひ下記よりお問い合わせください。